書籍・雑誌

世界の美術館

講談社ブッククラブの週刊「世界の美術館」を全巻購読。注文すると、既刊分をまとめて送ってくれて、あとは毎週新刊が届く。

A4のゆったりしたサイズで、新しい技術を生かした美麗な印刷。美術館の建築も楽しめるし、ジャンル別、作家別よりも退屈しない。全体で80冊ものシリーズなので解説も掘り下げられているし、少々マイナーな名画も紹介されている。自分で調べるとしたら集めたくなりそうな資料が要領よくまとまっていて、インターネット時代にも価値ある書籍メディアである。なにしろ印刷がいい。

毎号、作家一人ずつをハイライトしてその生涯を解説しているのもよい。10冊ずつのバインダーもつくりがよく、本棚にちゃんと永久保存ができる。いつかはヨーロッパの美術館めぐりを、という気にもさせてくれる。なんと素晴らしい企画だろうか。すっかり気にいった。

|

山田雅夫「スケッチは3分」

ベトナム旅行にて読了。書いてある通りに練習して、シェラトンハノイホテルからの景色をスケッチしてみる。結構面白い。対象をとても味わって観察するようになる。ささやかな趣味にできるかも知れない。やがては人間を描けるといいなあ。

|

マダム・ホー「世界一愚かなお金持ち、日本人」

またまたよくあるタイトルの不動産投資本。「金持ち父さん」よりは客観的で有益ではある。要するに相場の良し悪しを問わず上がる場所を買わんと意味ないよ、どこが10年で上がるか鼻が利いたから儲けたのさ、それがこの本のアドバイス全体の最大の大前提ですよ、という当たり前をきちんと書いている点はよい。ほらやっぱり思ったとおりではないか。
でないと全部逆回りになるわけだから怖い。いい場所でないと暴落したとき乗り越えられない、とか当たり前だけど体験談はためになる。仕事は好き好きだが投資は冷静に、とかいいこと書いてある。人脈作りには、華やかな、成金の集まる場所ではなくてNPOとかボランティアとか社会貢献の場所に行け、などなど。
必死に不動産投資を薦めるいわゆる”プライベートバンカー”の人たちと話す前にさらっと読んでおいてよかった。ほんとにもう素人をカモるPBには気をつけなくちゃ。楽しく儲けさせてくれる優秀な営業と出会ったら大事にしないといけないが、もう数年ご無沙汰。日本の証券会社は数年ごとの人事異動が組み込まれている。不祥事防止というが、顧客無視とも言える。顧客の評価次第で一生付き合える仕組みになればいいのだが。

20代のころ、「30歳で金のある馬鹿、ない馬鹿」という言葉を教えてくれた先輩がいた。浪費も若いからできる人生経験、自分への投資となる出費もあるから30で金をためてる奴は馬鹿だし、本当に使ってしまって金のない奴もそれはそれでまた馬鹿。どっちに転んでもおんなじだというような意味?だったかと思うが、この分かったような分からんようなフレーズが結構印象に残っている。

|

金哲彦「3時間台で完走するマラソン」

本日読了。素晴らしい良書。全く無駄なく、著者の長年に亘るマラソンと陸上競技の選手、監督経験から得られた初心者、中級車向けのノウハウが収められている。道具の大切さ、正しい歩き方、走り方、トレーニングプログラムなどコンパクトにまとめられている。

歩き方を書いてある通りにしてみると、体が軽くなり、楽に速く歩けるようになった。ぎっくり腰からようやく回復したばかりなのでウォーキングから。朝もバスをやめて歩くようになり、エスカレーターにも乗らなくなった。仕事で頭を使わないのでイライラし、これじゃウォーキングで給料もらってるようなもんだと、ふてくされていたが、開き直ってどんどん歩くことにした。ランニングのことだけでなく、生活習慣についても学ぶこと多し。夜寝る前には食べるな、などなど、どうしていけないのかを著者に教わることによって、始めて本気でやめよう、と思えた。お風呂の大切さとか、朝食の大事さとか、家人やテレビに言われてもまるで言うこと聞かなかった訳だけれどこの本には説得力がある。

早速道具を調達することにして、銀座のアシックスショップにでも行こうと計画。だが会社でマラソンを趣味にしている女子社員に聞くと、渋谷のアートスポーツがいいという。西口のめがねドラックの裏である。全種類、全サイズを揃えた素晴らしいシューズの品揃え。豊富な商品知識を持つ店員。見事な品揃えの中から客のニーズに合った商品をぴたりと探し出して推薦する能力。実に素晴らしいお店ではないか。何も考えていないバイト店員がいないというのは何と心地よいことか。買い物品目、

・ランニングシューズ アシックスのもの。驚異的に履き心地がいい。
・ウォーキングシューズ やはりアシックス製。ダサいけれども、革靴はやめてもうこれでいくことにした。ちょっと変な人で構わない。
・腰に巻く小物入れ 店員さんの合理的な商品説明に納得。
・ガーミンのGPSウォッチ 距離も速度も考えられる機能がちゃんとあり、電波感度もいいらしい。そろそろ成熟化に向かうカテゴリーとみて即購入。
・ナイキのTシャツ、7分パンツ 試着してみると動きやすさにびっくり。もの凄く工夫された商品だ。
・ランニングタイツ 必要性が分かった。確かにあるといいに違いない。
・ランニングソックス なんと2年保証がついている靴下。2足購入。
・ナイキのキャップ フィット感がよく汗の吸収発散が良さそう。

5年前には結構多摩川を走っていたが、その頃は道具のことなど全く考えずに綿のTシャツにテニスシューズとかで走っていた。サポーター巻くのもいいが太ももの筋力つけるのがひざ痛の予防になる、などなどこの本から教わったことはほぼ全ページ分だ。歩くだけ、ジョギングだけでも目標を高く持ち、正しい知識を持つことは意義があるのだなあと感銘を受ける。

|

田中智志「教育学がわかる事典」

通勤途中と初島旅行にて読了。
さくいん、文献リストなど非常に丁寧。実に誠実に、きっちりと書かれた良書。著者お一人によって全項目が書かれている。教育学を発展させていこうという意欲に溢れ、現代思想全般の学際的な知識に支えられた嘘のない本だ。大きな問題に正面から書いていてとても好感が持てる。現代の学問的良識。ビジネス書の日本実業出版社読後感が実にさわやか。現代思想に早くキャッチアップしないと。

|

Peter Bialobrzeski "Heimat"

青山一丁目のBook246は実に面白い本屋さん。本のセレクトショップだ。そこでふと目にとまった写真集。写真家の予備知識等はゼロ。9000円くらいしたが衝動買いした。ブリューゲルの絵のように手前から遠方までピントがあっている。どうやって撮ったのか、かなりの引きで絞り込まないと撮れないだろう。必ず小さな人物群が映しこまれている。雪原、ビーチ、渓谷、渓流など自然と戯れる人々の姿。類稀な色彩が見事。一枚一枚、きわめて美しい。非常に芸術性の高い写真。新古本と思われるがつくづく買ってよかった。あのとき買わなければ一度パラパラと見たきりで終わっただろう。年の功で、一期一会を確実につかまえる力はついてきているように思う。(と思ったらアマゾンで新品を5000円くらいで発見。ま、いっか。美術書店では8800円が定価のようだ。アマゾンで輸入写真集を買うと安いのか。さすが。)
どういう写真家なのかおいおい調べてみよう。

ちょっと調べてみると、ドイツ人で46歳、ブレーメン大学の写真の先生。ダイムラークライスラーなど企業の写真も手がけているらしい。ベンツのカタログとかも彼だろうか。他に3冊写真集が出ていて、本人のホームページにすこしだけ紹介されている。インドの写真集が一冊に、都市の写真が二冊。

ティルト、シフトレンズとやらを使うと、角度を調整することによって手前から向こうまでピントを合わせることができるらしい。ググると作例まで出てきた。これを使っていたのか。それにしてもインターネットは調べ物にはほんとに便利だ。自分もなにか情報をアップして人様のお役に立ちたいものだが、専門分野がなんにもない。いずれは人様の調べものの役に立つような情報をインターネットにのせる。これを抱負にしよう。

| | コメント (0)

木田元「反哲学入門」

読了。読み終わるのが残念。ちょうど構造主義思想の入り口で終わっているので、ぜひ続編を作って欲しい。分かりやすさやバランスのよさといった談話をベースにした本作りのメリットが発揮されている。編集者の貢献も大きい。きわめて優れた入門書。仕事を他に持ちつつ、存在の不思議がどうしても気になり、思想分野から離れられずにつまみ読みを繰り返してきているような人にぴったりはまる。直接教えを受けたいものだなあ。
昨今、歴史的に大きな思想上の転回点にさしかかっているという気配を感じる。専門雑誌類を一通りリサーチしてみようと思う。10年前はインターネットに夢中になってしまった。あのときはそれを仕事にできたけど。今度は仕事とは時間の取り合い。

本日、マラソンの本を読み始める。健全な体は必要だし、考えることそのものなのかも知れず、だとすると体を動かすことそのものを時間の無駄とは思わなくなるかもしれないから。まず形からということでランニングシューズを買おう。3年間で体重が10キロ増えている。よくない。

| | コメント (0)

本棚の整理

古本屋に売る本を整理する。本の種類によって一番高く買ってくれる店、というのを一通り探し出したいものだ。西馬込に住んでいた頃は川崎の古本屋にたびたび行ったが概ね高く買ってくれる。ブックオフはひどい。単行本はどんなものでも新しい順に、だが捨て値しか付けない。いい本かどうかなんてもちろん全く判断しない。とにかく安い本で新しいものをすぐに売るのに向いているわけだが、そういう買い方ではやがてお客も離れるだろう。アルバイト学生ばかりでチェーンオペレーションではどうしようもないだろうけれど。売ってる本の品揃えは意外に良かったりするので、随分彼らサイドが得をしていることになる。一番売るほうが損をしないのはヤフオクだろうけれど、手間がかかるので無理だ。

本の良さはすぐには分からない。しばらく本棚の肥やしになっていたのを取り出して、間違えて売ってしまわぬよう、蔵書入りと売却を選別していく。このように記録しておけば必要ならまた取り寄せたりもできるから、割り切って売ってしまえる。これは精神衛生上大変よろしい。本は売ると自分の一部が欠落してしまうことになるのでこれまでに幾度となく後悔してきた。川崎で売った大量の本はどんな本たちだったのだろう。

いまどきの小学生であれば、高学年からブログに読書記録を付け始めれば一生分の記録がきちんと残ることになる。「特打ち小学生」でタイピング練習にいそしんでいる長男に薦めてみた。まあ、やらないだろうけど。

売却

・福田和也「成熟への名作案内」「悪の読書術」「ひと月百冊読み三百枚書く私の方法」 「作家の値打ち」が面白いガイドブックだったので買ってみたが、いまいち。

・南伸坊「モンガイカンの美術館」「本人の人々」「笑う写真」
・マークブキャナン「複雑な世界、単純な法則」
・宮本昌孝「風魔(上・下)」 大変面白かった。場所をとるので。
・連城三紀彦「戻り川心中」 評判どおり大変味のある時代推理小説。面白かった。
・板倉昭二「「私」はいつ生まれるか」 思想書かと思ったらブルーバックス系統の本。 
・山平重樹「ヤクザに学ぶ組織論」 参考になるかと思ったが嫌悪感が先だって読めず。
・佐伯一麦「ア・ルースボーイ」 数ページで挫折。文章が合わない。
・Dan Brown "The Da Vinci Code" 面白い。平易な英語。
・村上龍「テニスボーイの憂鬱」 落ちが見えてしまう感じ。説教臭い。読ませてしまうが。村上龍はなんといっても「五分後の世界」
・島田雅彦「彼岸先生」 よく時間の経過に耐えていると思う。機会があったらシリーズを読もう。
・池田晶子「自称そのものへ!」「考える人」 パッションには共感するが、文が散漫すぎて読めない。まとめて売る。
・中島義道「うるさい日本の私」「私の嫌いな10の人びと」「日本人を<半分>降りる」「はたらくのがイヤな人のための本」「哲学者とは何か」「偏食的生き方のすすめ」「カイン」 中島義道さんには共感するので本はまとめ買いしたけれども余りにエキセントリックなので食傷。まとめて売ることにした。もう読まないだろう。エッセイ系の文庫は要注意。
・養老孟司、テリー伊藤「日本人の正体」
・スティーブンキング「スタンドバイミー」
・白州正子「いまなぜ青山二郎なのか」「遊鬼」「白州正子自伝」 最後の武家の姫様。
・マシューパール「ダンテクラブ」 ダヴィンチコードの流れでついつい買ってしまった。原書まで。10ページくらいで挫折。
・小谷野敦「もてない男」「評論家入門」
・羽生善治「決断力」
・塩野七生「チェーザレボルジアあるいは優雅なる冷酷」 
・池波正太郎「男の作法」
・桐野夏生「玉蘭」
・赤瀬川源平「千利休 無言の前衛」 二冊買ってしまった。いい本でも読んだのを忘れて二冊買ってしまうことがしばしばある。だからこのようにメモをつけることにした。
・島田荘司「魔神の遊戯」 途中で挫折。御手洗潔シリーズは好きだが馬車道ものに限る。外国人が登場してくると今一つ。御手洗は世界的にすごい、というのは無理があるでしょう。カタカナの名前は日本人小説家には難しいものだ。
・須賀敦子「ヴェネツィアの宿」 白州正子の流れで買ってみた。三行目くらいで挫折。海外留学生のブログみたいなもの。
・小川洋子「妊娠カレンダー」 未読。二行目くらいで挫折。斜め読みで読了するも良さわからず。
・グレッグ・イーガン「順列都市(上・下)」 上巻の真ん中で挫折。サイバーパンクSFは僕には無理だ。
・森岡正博「感じない男」 
・森岡正博「無痛文明論」 これは思想書?エッセイとしては面白い。3800円もするが何か深刻な姿勢に惹かれて買ってしまった。
・千葉憲昭「オーディオ常識のウソ・マコト」 二冊買ってしまった
・山際素男「不可触民と現代インド」 そういえばインドのカーストはどうなっているのか、と思ってつい購入。フィールドワーク的見聞録として価値はあるが全体は見えない。
・恩田陸「六番目の小夜子」 佳作。
・波頭亮・茂木健一郎「日本人の精神と資本主義の倫理」 以前に記録。
・北野武「全思考」 とても面白かった。
・テリー伊藤・清水草一「間違えっぱなしのクルマ選び2005」「レクサス0点、ランエボ100点」 テリー伊藤と清水草一の対談はこの頃までは出れば買っていた。大いに共感。さすがにマンネリ化したか。
・テリー伊藤「不道徳講座」
・アルボムッレ・スマナサーラ「希望のしくみ」 生きる意味は無い、と言い切っているところがすごい。本人もよく分かってないと思う。二人の話しのかみ合わなさが面白い。
・日垣隆「いい加減にしろよ(笑)」 平山画伯批判が最高。よくぞ言ってくれました!この人の批評はいつ読んでも面白い。
・小谷野敦「帰ってきたもてない男」 理想を高く持つのはいいことだ。もてないのではなくもてないことを選んでいるという主張で、その通り。
・梅田望夫「ウェブ進化論」 タイムリーな時事レポートだった。まだ2年も経っていないのに言い古された感じがするほど、この世界の変化は早い。”紹介者”の立ち位置は微妙だ。
・飛浩隆「ラギッド・ガール」 ネットで買ったが、書店で手に取ったら買わなかっただろう。字面がもうだめ。サイバーSFを買うのはしばらくよそう。
・町田康「告白」 少し齧って挫折。「くっすん大黒」に感動していろいろ買ってみたが他はピンとこなかった。
・松浦理英子「ナチュラル・ウーマン」 福田和也さんが薦めていたので読んでみた。
・茂木健一郎「すべては音楽から生まれる」
・土屋賢二「貧相ですが、何か?」 
・内田樹「下流志向」

蔵書入り

・マックス・ギュンター「マネーの公理」 売ろうと思ったが気が変わって蔵書入り。投資哲学の本だが人生哲学として共感するところ多し。分散投資はするな、とか。さっさと撤退しろとか。投資書としては、力のある投資家向け。
・米原万理「打ちのめされるようなすごい本」 書評かと思って購入したら、読書日記だったのでたなざらしになっていた。改めてパラパラめくってみると、とても真面目な読書日記である。最後の記事を書いて一年もせず癌で亡くなられたようだ。闘病しながらの読書記録となると、切なくてやはり読めそうにないが、読まずに売るのも忍びない。
・小谷野敦「バカのための読書術」 表題と違ってなかなか辛らつな批評文集。面白い。彼のようにしっかりとリサーチした上で自分の考えを堂々と表明している人の著作は主張の良し悪しはともかく読む価値がある。こちらのリサーチ時間を短縮し、批判的視点を持たせてくれるから。
・久世光彦「早く昔になればいい」 売ろうかと思ったが手放せない。
・河野多恵子「後日の話」 傑作。
・小島信夫「抱擁家族」 傑作中の傑作。インパクト大きい。入手しづらくなるだろう。
・「パパラギ」 これは一生持ってるだろう。
・"Leadbetter's Quick Tips" フロリダのレッドベターゴルフスクールのあるホテルにてラウンドした後で購入。読みながらショートホールを三週くらいしてみた。即効性があってよい。他のゴルフ本はいらない。要点をメモに書いてゴルフバックに入れておいた。邦訳はあるのだろうか。
・バリー・シュワルツ「なぜ選ぶたびに後悔するのか」 まさにこれだなと思って平積みから購入。内容も予想どおり。自分なりに気をつけていたことがちゃんと分析され、整理されている。忘れないようにとっておく。
・井伏鱒二「珍品堂主人」 傑作中の傑作。
・イシグロ「日の名残り」 佳作。
・津本陽「薩南示現流」 以前書いたが、傑作中の傑作。最高の剣豪小説。白州正子推薦。
・バラード「コカインナイト」 傑作。
・米長邦雄「人間における勝負の研究」 忘れた頃に読むとしみじみと教えられるところがある。こういう本こそ蔵書しておかねば。捨てないでよかった。
・横森理香「ぼぎちん」 とてもいいセリフとフレーズが沢山。個人的思い出とリンクした作品。捨てなくてよかった。

| | コメント (0)

読書

併行して読む本が増え、それぞれ寄り道をしながらで進まない。途中でやめたきり忘れる、といったことがないようにちょっとメモ。
・木田元「反哲学入門」
・木田元「ハイデガー『存在と時間』の構築」
・田中智志「教育学がわかる事典」
・「斉藤秀雄講義録」
・村上春樹「不思議な図書館」
・荒川洋治「文芸時評という感想」
・Martin Heidegger"Being and Time"
みんな寄り道しやすい本ばかりで進まない。寝るのが二時近くで体がもたないな。
木田元「反哲学入門」は聞き書きのよい本だ。17ページ「哲学という麻薬」の章に感動。「哲学から抜け出せないことは、とても不幸なことなのですがね。」「哲学は不知の病のようなものですよ。」「哲学という病にとり憑かれた人はもう仕方がありませんから、せめてそういう人たちを少しでも楽に往生させてやろう、哲学に導きいれてやろうと、そんなふうに考えて本を書いているのです。」「わたしの書く入門書は、同じような不幸を抱える人を読者に想定して書いています。同病相憐れむですね。」
有難い。気取りとか、ファッションとか、優越感とか、世すぎとか、ポーズとか、思想関係者にしばしば感じられるネガがない。言葉遣いに対して非常に鋭敏な感性を持っておられ、構造主義的批判精神に貫かれているので、とてもついていきやすい。読み進めるほどにカタルシスを感じる。高校時代が大学初年には出会いたかった本。
文中、少しでも意味の理解があいまいな言葉はウィキるようにしている。これは非常に良い習慣だと思うのだが、寄り道を誘発しやすい。寄り道だけで一時間くらいあっという間だ。なかなかページが進まない。
哲学が勉強したくてついつい大学の美学科、思想史科、哲学科の社会人受け入れ情報をサーチしてしまう。どこの大学でも、哲学科で社会人に門戸を開いているところなんてない。ニーズはないのだろうか。いい大人が哲学なんてあり得ない、そんなの勉強してどうすんだ、同じ考えるんなら大人は「企業価値」とか「CSR]とか考えなくちゃ、勉強は何かの役に立つための”職業訓練”という規範が支配しているのが東京丸の内。行って世間体が持つのは経営大学院とかMBAとかだけ。「哲学」というのは木田さんも指摘しているとおり、言葉が悪い。昼間仕事の時間帯にビジネス街で「哲学」なんて口走ると、瞬間的に周囲の人がどん引きする。いい年して立場もあるくせに哲学がやりたいなんて、冗談だと思ってくれてるうちはいいが、本気だと悟られたら「彼はパッションを失った」とか言われ、たちまち足をすくわれ、文字通り失脚してしまうだろう。語感のせいだ。なんとかならんだろうか。
木田さんによれば、そもそもの言葉の起こりは、今を去ること2600年前、ピタゴラスが、世界には「商人のように金銭を愛する人」、「軍人やスポーツ選手のように名誉を愛する人」と、自分のような「知識を愛する人」の三種類の人がいるよね、と言ったのが始まりだそうだ(前出、31ページ)。現代でも確かにこの三分類。ビジネス界では①②の人種が尊ばれ、③はお呼びではない。ただしコンサルタント業界には③がいます。③になりきれず①②の血がちょっと混じってしまっている中途半端な人々。僕はまさにそれだ。
木田さんがいうように、③であっても経営とか金融とか、役に立つ知なら話しは違うのだが、哲学となると、厳しい。

| | コメント (0)

新書「音律と音階の科学」

小方厚氏によるすばらしい新書。昨日、斜め読みにて読了。音律の成り立ちを理系的に説明している貴重な本。楽典に書かれている呪文みたいなことどもを、周波数スペクトルとか対数とか、理系の僕にもなじみがあってホッとする用語と概念で説明してくれている。和音についても、統計的に調査した結果作成された”不協和曲線”という基礎からちゃんと敷衍してって解説。なんとヘルムホルツが登場する。神様は登場しません。すばらしい。
「はっきり言って音程の数え方は合理的ではない。一つの原因は。。。」とか、そうじゃないかと思ってたんだと膝を打つ。これは音楽関係者には書けんでしょう。文系理系の相互侵食にこそ未来はある。
音律が平均律以外に数十もあるなんて始めて知った。インターネットで、それぞれの音律での演奏の違いがバリバリに聴けるのも始めて知った。なんて面白いんだろう。インターネットは、こっちから調べない限り、「こんな面白いこともありますよ」なんて教えてはくれない。リコメンデーションエンジンの凝り性版、誰か作ってくれないだろうか。”凝り性”はおのずからサンプル数が少ないから難しいだろうけど。

| | コメント (0)

「おじさん」的思考 内田樹

内田さんの「おじさん」的思考、を読了。ブログからの編集本とのことだ。
憲法9条論、海外派兵についてなど、いくつかご尤もなご指摘。日本は変わっているからこそいい、ほっこりした国でいよう、など目からウロコが落ちるというか憑き物が落ちた感じで楽になった。内田さんの言葉って、なんか鍼治療に似ている。精神の凝りをほぐしてくれる。
「匿名で発信する人が大嫌い」というご意見にちょっと押される。確かに匿名で、泡沫ブログとはいえ人様の著作の感想文を公開するというのは道義的に問題あるかもしれない。本人としては備忘録な訳だけれど。これからは、読んだ本の記録は絶対につけると心に決めたのだ。でないと大いに人生の記憶の欠落を引き起こすことになるのだ。
過去を大切にしよう。今を大切にしよう。こどもの顔をよくみて、話しをよく聞こう。妻の顔をよくみて、気持ちを考え、話しを良く聞こう。
内田樹さんの著作も例に漏れず、エッセイ集は出版社の編集主導という感じ。まあ、今後はご本人として力の入った学術書(「私家版ユダヤ文化論」のような)を中心に読むことにしよう。

もう一冊「村上春樹にご用心」も購入してちょっと読む。ハルキ作品を読み返したくなるしそれと併せて読む方が楽しめそうなのでとっておくことにする。

| | コメント (0)

「会社の値段」森夫明著

昨日読了。いわゆる”企業価値”について非常にバランスよくまとめられた本。単なる用語や定義の教科書的な解説と異なり、考え方の起こり、歴史的背景、時事イシューの解釈など多面的で、本質の理解を助ける。この本も入門書の体裁であり、実に手軽な新書なのだが、ファイナンスや企業経営、コーポレートガバナンス、投資といった広大な領域全体を見渡す背骨を抉り出している”専門書”型の新書だ。ほんとに玉石混淆だなあ。
早くも内田樹に影響されて、ユダヤ的、非ユダヤ的という目でこういう分野も眺めてしまう。あまりにも明快に理解できるような気がするから。

| | コメント (0)

「私家版・ユダヤ文化論」内田樹著

「寝ながら学べる構造主義」に続いて読了。子供の受験の付き添いで、待ち時間に読んでしまった。半日で一冊読めて、やっぱり昼間フルタイムで読書するのは実に効率がいい。
この、「私家版・ユダヤ文化論」は人間とは何かという答えの出ない疑問の周辺にある難問群に、ユダヤという切り口から正面突破を志した重量級の著作だ。手軽な新書の体裁、講義録からの編集という成り立ちだがその内容は著者30年間の研究成果。”知性”の分析が素晴らしい。日本人であることは思想家である上でのアドバンテージに成り得ることを示している。広く翻訳されることを願わずにいられない。構造主義の思考ツールを駆使して人類の難問に自分なりに挑戦する。「私家版」大いに歓迎である。抜群の名著。

| | コメント (0)

「寝ながら学べる構造主義」内田樹

139ページ、ロラン・バルトの章の終わりまで読了。なんとも読んでいるのが恥ずかしいタイトルなのでカバーを裏返しにして読んでいる。宗教を齧った以外は終始一貫して理系の僕は、大学教養課程を最後に人文科学系からは門外漢となった。もともと社会にも出世にもまるで興味がなかった極楽トンボなので、社会人になったころ世の中の仕組みの基本的なことを知らないことにひどく焦った。そのころは歴史、経済、金融、政治、文学、思想などなど人文系の社会人向け”早分かり”入門書だの、橋爪大三郎の本だのを壁面書棚一杯に買い込んでまとめ読みしたりしていた。鷲田コヤタとかも読んだりした。このときの体験はそれなりにバランス回復には役立った気がする。
あの頃の本はどこ行っちゃったんだろうか。そういえば前の会社に寄付したっけな。いらんっつーのに。まさに空気読めない僕ならではの恥さらしな愚行だ。若いときに読んだ本は邪魔なものだ。記念にしかならない本が沢山。捨てるしかない。せめて古本屋に持っていかなかったことを悔やむ。
僕は結局、人文系では万年入門書読者となった。原典となっている訳本は近代の手前くらいまで。それならかろうじて言葉としては分かるので、解説書とセットにすれば分かった気くらいにはなれる。でも近代になるとど真ん中の哲学書はもうだめだ。どんなに努力しても原典訳本は読み通せないし、解説書を読んでも分からない。分かるのはちょっと周辺の社会学系、経済学系の古典まで。そして年をとって根気もなくなり、思想関係で何か入門書の新刊が出れば半自動的に購入しさっと読むのが習慣となった。
そのノリで手に取った内田さんのこの本。「下流指向」で注目していたので興味を持った。あとがきにあるように「縁側でご隠居さんが、熊さん(とか横丁のみなさん)相手にお茶飲みながら説教してるような本」とのことで、僕はまさに横丁のみなさんレベルの読者なので、おかげさまで良く分かる。特にバルトの章の終わり、137ページから139ページ。潰えかけていた勉強意欲を鼓舞して頂けた。ほんとにありがとうございます。このバルトの章、特にテクスト理論の説明は、「考える」ことへの警戒と疑いを感じていた僕に、前進する道しるべを与えてくれた気がする。
それにしても9時~6時で仕事してたら、結局、上手に考える方法も分からないまま人生終えることになるのは明白だ。仕事においては良かれ悪しかれ、お金を稼ぐ必要にかられて随分”考えた”ので、その鍛錬とかスキルは人文系に活きないもんだろうか。

1月29日更新。読了。5章でレヴィ・ストロースの業績を”かいつまんで”説明してくれたのはとてもありがたい。意味のある入門用の解説というのはあるようで無いのだ。6章のラカンの精神分析の説明は、中身よりも内田さんによる解釈が素晴らしい。「3大人になるということ」の194ページ結語の部分。専門的な学問としてはではなく自分で考えるための教養として、敷衍していくことには大いに意味があると思う。これらの”教祖”たちがどう言ったかを重んじる(「厳密に読み解く」云々)教条的な扱いをするより、ずれようが違っていこうが、バルトの「作者の死」(がそういう意味かどうかは分からないが)よろしく、考えを進める材料、道具として使い倒すことが面白いと思う。

内田さんの本が面白いので、少しだけ他の著作も買ってみた。中島義道、養老さんのときは最初に読んだ本を余りにも気に入ってしまい、まとめ買いしたのだが失敗した。3冊くらいで余りにも反復が増え、マンネリ化してきたために死蔵することになってしまった。最近の文庫や新書の出し方はちょっとひどい。同じような内容で量産して読者がそのどれかに引っかかるを当てにした商法だ。これでは作者の価値が劣化する。茂木さんとかにもその傾向が顕著なので憂慮するけど、一市民が憂慮しても何も変わらんだろう。この点ではるかに心得ているのは本職作家、小説家たちだ。村上春樹ほどの大家ならずともそれぞれ上手に、自分のペースで本を出しており、出版社に踊らされていない。やはり名声に飢える学者が餌食になりやすい。

| | コメント (0)

「誰がヴァイオリンを殺したか」

石井宏さんの「誰がヴァイオリンを殺したか」を読了。演奏家としてのウジェーヌ・イザイなど20世紀初頭のヴァイオリニストの紹介、”ファウスト”ゆかりのベルリーズやリストの作品、アマティ、ガルネル、ストラディバリウスといった名器の起源、パガニーニの詳しくて面白い評伝、そして他の著作にも一貫する石井さんの”音楽の衰退”についての問題指摘と警鐘。現代人は音や光に対する感性が一般に低くなっているというのはその通りだろう。
音楽の世界の言説というのは、当然の前提とされていることがとても多いので部外者はちょっと引いてしまう訳だが、石井さんの本を読むと、おそらく業界においては非常に言いにくいと思われること(現代のヴァイオリニストの音がみんなギコギコしてる、とか)がずばりと書かれていてほっとする。彼の19世紀から現代にかけての音楽演奏や現代音楽についての問題意識は大筋では当たっていると思われる。ただ、僕にはまだモーツアルトの良さがよく分からない。他の作曲家と同じように、いいと思う曲と、一般に名曲とされていてもあんまり何とも思わない曲に分かれるだけだ。
文中に出てくる曲で知らないのがあると、その場でナクソスミュージックライブラリで検索して聴きながら読み進めることができるが嬉しい。それによって読書の過程で新しい曲との出会いがいくつもあった。気に入った曲はプレイリストに登録して、ネットショップでCDも買った。(ナクソスミュージックライブラリにはサンサーンスによるピアノ協奏曲二番の自作自演なんてのもあった。サンサーンスその人の演奏が聴けるとは思ってもみなかった。ピアニストAtoZという全集。)
文中で激賞されている、アンドリュー・マンゼ演奏の「悪魔のトリル」が収録されていると思しきCDも発見して注文してみた。届くのが楽しみだ。

| | コメント (0)

「私の家」白書

久しぶりに建築関係の本を読んだ。清家清の「私の家」白書。清家清の住宅論は共感できる所が多く、僕は「私の家」のファンだ。特に自然のままを愛する庭についての考え方が好きだ。
この本は、「私の家」だけでなく、その後新築した「続・私の家」や「倅の家」、そして両親のための隠居所などの情報も記載されており、大変参考になる。前川國男の新旧自邸も素晴らしいが、清家邸の方が身近で具体的な参考としては役立つ。
住宅でほかにいい本と言えば、なんといってもルイスカーンの作品集だろう。

| | コメント (0)

「工作少年の日々」

森博嗣さんのエッセイ集を読了。彼の作品は始めて読んだ。処女作が出たとき手には取ったがいかにも大学関係者の作品だったので敬遠してしまって以来読んでいない。ものすごい執筆量で「どんどん書く人だなあ」と思っていた。ホームページをみてその著作の多さにびっくり。でも執筆に割く時間はどちらかといえば少なく、完全にフルタイムで大学助教授をなさり、食事も一回しかとらずに研究に没頭し、なおかつ膨大な鉄道模型製作と自宅庭の庭園鉄道に驚いた。ものすごくエネルギッシュな方だ。
「工作少年の日々」は実態そのままのタイトルでいい。通勤中に読みながら笑いをこらえるのに苦労した。饒舌な文体が実に巧みで技巧派だ。これを機会に色々とエッセイは読んでみようと思う。ふざけている風でいながら、理系的な批判精神が横溢している。非常に鋭く真実を喝破している箇所、”箴言”とすら言える箇所多数。筋の通った生き様が見事だ。面白くて、自分の生き方を考えさせられ、視野が広がるエッセイだった。

| | コメント (0)

音楽を「考える」 茂木健一郎 江村哲二

これは稀に見る名対談だ。

この本で茂木さんが吐露しておられる問題意識、志に、僭越ながら全面的に共感する。よくぞ言ってくれましたその通りっの連続だ。本当に僭越ながらこんなに自分の気持ち、考えと一致する人が世の中にいるとは。もはや茂木さんは誠に勝手ながら心の友である。巻末180ページから後ろ最後の2ページで、これまで彼に対して少し抱いていた、ちょっとお高くとまってるんじゃないか的な嫉妬心や反感が消し飛んだ。音楽に対する深い洞察を非常に面白く、興味深く味あわせてもらった。対談相手の作曲家、江村さんという方も素晴らしい。作品を聴いたことはなかったのでネットで早速注文した。

知的創作活動の佳境をサーフィンに例えたのは秀逸だ。僕にとって「フロー状態」というものらしき経験を最後にしたのは学生時代の研究中だった。本は背表紙だけ読めというデカルトの言葉を鵜呑みにしたバカ学生だった僕はろくに勉強もせずに研究ばかりしていた。そしてある夜、頭の中に突然、多次元空間が開けて、問題解決へのアプローチを180度転換させる方法と数式が見えた。その方法が、別の分野の教科書に載っている基礎定理と同じ内容であったことを後で知った。知っていれば苦労はしなかった訳で知らないことの愚かさが身にしみた。それと共に「自分だって教科書に載るような定理を思考力だけで導くだけの知的力量はある」という妙な自信にもなった。デカルトの言ってることを自分はちゃんと実行してるぞ、と。

しかしその後、仕事では20年間を通じて、そういう経験は浅いものが数度あっただけだ。真の創作には程遠い仕事上のブレークスルーなら、経験5年くらいで計画的、意図的に導けるようにもなった。綱渡りで仕事をする心境も活力を保つための本能なのかも知れない。でもまあ、浅い。茂木さんは「フロー状態」を誰でも程度の差はあっても経験する。それが人生の面白さだと書いているが、全く同感。僕は大学の研究室でのあの種の経験への飢餓感で押しつぶされそうな毎日を送っている。何か一歩を踏み出さなければと焦っている。

茂木さん、「現代はやっかいな時代で、あまり世間と付き合い過ぎると、作るものの質が落ちる。かと言って孤高を気取っていても仕方がない。」と巻末に書い ておられる。僭越ながら、本当にあまり世間と付き合い過ぎないで頂くことを祈りたい。著作も乱発すれば質は落ちよう。彼のブログを見たくて仕方がないが、 あえて見ていない。この本のような素晴らしい作品を待っていたい。ちくまプリマー新書。装丁の品もよい。

江村さんはこの対談が出てからわずか一月くらいあと、今年の6月に膵臓癌で亡くなられたようだ。なんと残念なことだろう。まだ47歳。自分も同じタイミングでこういう病気になれば、命はあと5年だ。対談中はまだ発病していなかったのだろうか。若年癌の進行は早いという。恐ろしいことだ。何かの間違いではないかと思ったが、ご本人のブログに奥様の文章が出ている。ブログの写真が、対談での発言のイメージそのままの風貌だ。会った事も無い、今日読んだ本で始めて知った人なのだが、胸が痛んで涙が出てしまった。ご冥福をお祈りします。

| | コメント (0)

音楽の文章セミナー 久保田慶一

サントリーホールに第9を聴きに行ったとき、アークシティーのツインビルの中にある丸善で購入。音楽関係は書棚1列くらいだが、いい本に出会うことが多い。

基本的には音楽大学の学生のための論文の書き方、という本だが非常にためになった。学問としての音楽の俯瞰図にもなっている。帯には「音楽ブログから学位論文まで」とあるが、演奏についてではなく曲そのものについてどの様に文章にするかを教えていて、音楽ブログとはあまり関係ないかも。ある程度、音楽の知識や実技経験がある人向けかも知れない。ネットでの信頼できる音楽文献の探し方や、巻末の参考文献一覧が非常にいい。こういう一覧は今まで見たことがなかった。フーガ、とかソナタ形式とかの本質的な解説があって目から鱗が落ちる。譜面をパラパラ弾きながら本文を読むとすごくいい。クラシック音楽はそのまま聴いてもいいし、背景や理屈を勉強してもまたいい。いいもんですな。テンペストの解説のくだりが最高だ。

この本は論文書法だから当たり前だが「理科系の作文技術」とかに通じるものがある。論文の書き方って、ほんとに大学で教えないものだ。この種の良書を読まなかったら研究やら論文執筆なんて絶対できない。できても大変な遠回りをしてしまう。理系の大学で卒論を書き、経営コンサルティングの会社に入って「仮説・検証」のアプローチを学び、これを大学で習っていたら、とつくづく思ったものだ。

それにしても音楽を題材に、これほどの膨大な書籍、論文が世の中にあること自体が大いなる驚きである。まあ、こうやって学問として扱うとなると、ちょっと引く。自然科学の場合は自然が相手の研究だからやってられるが、偉大な先人とはいえ、他人の創作したものを対象に一生をささげて研究するというのはどうも。その先に自分の創作、というゴールがないと自分にはできない。哲学者なら他人の哲学を研究した挙句には自分の哲学を作るということがあるでしょう。音楽の場合、作曲家や演奏家でないとしたら、そこはどうなるんだろうか。

諸々の芸術研究者の方々はおそらくどんな人でも嗜み程度には自分でも絵を描いたり、楽器を弾いたりはするものなのだろう。こうしてみると理系出身だとほんとに文化方面は不案内、わからんことだらけだ。文化、芸術方面への案内に関するきちんとした教育、再教育事業というのはきっとニーズがあるはずだ。

| | コメント (0)

ステレオサウンドのバックナンバー

最近、ステサンの古いバックナンバーを見つけては買っている。年一回のベストバイと受賞発表の号は中古でないと売ってないし。今日は99年ごろの129、130、そして137、145号が届いた。面白い。今中古機として出ている機器が新作のころの記事が読めるし、現行製品に連なるメーカーの歴史も分かる。読んでるうちに執筆陣にだんだんと親近感が増してくる。菅野さん、柳沢さん、朝沼さん、上杉さんなどほんとにいいなあ。レコード演奏家訪問も評論家の人たちの自邸に菅野さんが訪問する記事なんて非常に面白い。高額商品が増えたのは別に彼らのせいじゃないもんなあ。彼らは結構正直だと感じる。

| | コメント (0)

本の棚卸

数十年間に読んだ本の記憶を掘り起こして目録を作る。棚卸をしてみると、すぐに書名が出てこなくて情けない。何の役に立つかはわからないが、今やらないと全て忘却してしまうだろうから、思いたったが吉日だ。

6回くらいの引越しのたびごとに本は処分してきているので、記憶を紐解いていくしかない。片鱗でも思い出せれば、インターネットのおかげで手繰るのは容易である。印象だけで中身を忘れてしまっている本がとても多い。昔はSFをよく読んでいて大事にしていた作品もあったがもはや忘却の彼方である。時間がかかるので都度更新していこう。自分が「こりゃ傑作」と思う作品の特徴を帰納法であぶりだせれば、新しく本を選ぶときの参考になるかも知れない。面白い本は数多くあるが、これは芸術だ、とっておこう、とまで思う本は少ない。

SFの作品が思い出せなくてネットを見ていたら、ついつい河出書房の20世紀SF集を6巻通しで注文してしまった。ロジャーゼラズニイでいい作品があった気がするが何だったか思い出せない。

(最終更新12月18日)

①傑作。文句無しに好き

現代

カズオイシグロ「私を離さないで」 読了後の深く尾を引く感動。やるせなさの極致。すごい小説。読了してしばらくは声も出ない。

野坂昭如「骨餓身峠死人葛」 この棚卸を考え付いて、思い出した小説。探してみるが出てこない。ネットで探すと文庫は絶版のようだ。3巻ものの全集が出ていて、その第二巻に表題作として収録されていた。再読して改めて驚嘆した。20年くらい前に読んだが、細部までかなり克明に記憶していたことにもびっくり。よほど強烈な印象だったのだろう。今読んでも素晴らしい完成度。この全集第二巻の他の収録作品は全て初読だが見事な面白さ。思わぬ拾い物をして嬉しい。3巻全部買ってしまいそうだ。

村上春樹「世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランド」 最新作までを通じてこれが抜きん出ている。ノルウェイもいいが、やっぱりこっち。クロニクルはインパクトが薄い。この小説はすごい。作者もこれを出して以降、ちょっと魂を抜かれた感じ。作者の魂を吸い取ってしまった作品だと思う。

佐藤亜紀「バルダザールの遍歴」

山口雅也「生ける屍の死」

サラ・ウォーターズ(すりの話し)(手品師の話し)

矢作俊彦「あじゃぱん」

浅田次郎「天切り松闇がたり」 浅田次郎には誰でも一時期はまるものだ。「蒼穹の昴」「プリズンホテル」など大作も素晴らしいが、文句なしに好きなのはこのシリーズ。男泣きに泣ける。まあ、再読はしなそうだが。ぽっぽやは映画が実によかった。

宮尾登美子「鬼龍院花子の生涯」 仲代達矢の映画も良かったが、小説も素晴らしい。

桜庭一樹「赤朽葉家の伝説」 

ははき木蓬生「逃亡」 実に読み応えがあり、読後感の爽快な大作。面白い。

漫画

内田春菊「呪いのワンピース」「吸血少女vs少女フランケン」 力を抜いて描いているが、構成、ストーリー、絵、すべてのバランスが良く傑作になっている。絵が本当に秀逸。後年はうまくなりすぎてパターン化したが、この頃のは作者の天才が良く現れている。今でも中古でそこそこ手に入るようだ。20年以上も捨てずにとってある。

士郎正宗「攻殻機動隊1」 映画や「2」もあるが、結局この「1」で出尽くしている。稀代の名作。何度読み返したか分からない。アップルシードも全て読んだが、これにははるかに及ばない。

手塚治虫「奇子」 傑作。

藤子・F・不二雄「ミノタウロスの皿」 非常にいい。会田誠の美味ちゃんに通じる。同じようなものをと思ってもない。

業田良家「自虐の詩」

「シグルイ」 際物とぎりぎりだが、やはり図抜けたものがあって忘れ難い。進行中。好き嫌いは分かれる。

剣客もの

津本陽「薩南示現流」 最高の剣豪小説。

推理・サスペンス

京極夏彦「魍魎のはこ(漢字が出せない)」 予備知識なく、初版の時に書店平積みのを手にとって読んで大ショック。出だしの素晴らしさに圧倒され、落ちの見事さに脱帽。それ以降全部京極作品を読んでいるが、これを越える作品は出ていない。

綾辻行人「霧越邸殺人事件」 推理小説としてではなく、幻想小説として綺麗。手元に置いておきたい。

SF

J・P・ホーガン「星を継ぐ者」 中身は完全に忘れたが、印象は強い。他にも色々あったのだが。。思い出し中。クラークの作品もおしなべて良かった。

古典

谷崎潤一郎「少将滋幹の母」「細雪」 ほとんど読んだが、「細雪」が特にいい。

三島由紀夫(天人五衰など4部作) ほとんどの作品を読んだが、やはり最後年の傑作4部作が、圧倒的にすごい。

井伏鱒二「珍品堂主人」

大江健三郎「飼育」

アナイス・ニン「デルタ・オヴ・ヴィーナス」 20年前に原書に感動。ポルノなら英語の勉強が進む、と英語教師が薦めてくれた。ポルノというより完全に芸術。ないだろうと思っていたら、なんとネットで翻訳の古書を発見。注文してみた。

②次点

町田康「くっすん大黒」「きれぎれ」

カズオイシグロ「日の名残り」 イシグロは切なさを表現する天才。

「風魔」

横森理香「ぼぎちん」

笠井潔「哲学者の密室」 分厚いけど楽しく読める。長さを楽しめて良い。

J・G・バラード「コカインナイト」

スティーブン・キング「スタンド・バイ・ミー」「(囚人の話)」

池波正太郎「鬼平犯科帳」 全巻買ってあるが半分くらいでお休み中。

島田雅彦「彼岸先生」

村上龍「5分後の世界」 彼の小説では一番いいのではないか。テニスボーイの憂鬱やイビザなども面白いし、暴力性や時代の空気などを描くのはいいのだが美しさがないのが欠点。そういう価値観はあまり無い作家なのでしょう。「5分後の世界」には踊り子の場面が美しい。それだけでも価値がある。

漫画「皇国の守護者」 進行中。早く次巻が読みたい。世界観の設定が見事。美しさのある漫画。

「ツイラク」極めていい小説だが、一箇所だけ禁を破って文中に作者が顔を出してしまった箇所があり全体を台無しにしている。

③面白いが、基本的には面白いだけ

桜庭一樹「青年のための読書クラブ」

歌野晶午

桐野夏生

パトリシア・コーンウェル


⑤番外際物

「メルカトルなんとか」

⑥再挑戦要。読了すれば面白いのかも知れない

カズオイシグロ「充たされざる者」

町田康「告白」

佐藤亜紀「ミノタウロス」

| | コメント (0)

桜庭一樹 赤朽葉家の伝説

本格的で読み応えのある傑作。日経新聞の書評でしばしば絶賛されているので気になっていた。初めて読んでみて、読みながら余りにもうまいので「この人は何者だ?!」と思うことしきりだった。文章は時に詩情があり、名文句も多い。佐藤亜紀と少し似ているとも思ったが、他の作品、例えば「青年のための読書クラブ」などを読むと違う傾向、出自の作家だということが分かる。この「赤朽葉家」はコンパクトな大河小説。小説の構想の大きさからすれば、この3倍くらい長くても十分に読み通せる、大変面白い小説だ。

僕はさほど小説は読まないほうで、よほど面白くないと読了しない。ブックガイドは大好きだ。福田和也の「作家の値打ち」は3割くらいは薦めている本で面白いのを発見できた。読んで面白かった本でも、本棚スペースが少ないので時間が経つと売らないまでもどこかになくしてしまう。記録として残しておこうと思っている。再読したり人に薦めることもあるし。ランク分けとしては、①一気に面白くて読める。完成度の高い作品だと思う。古典的名作を含む。②一応は読めるし面白いが傑作というほどではない。③面白くない、勢いがない、難解など種々の理由で読了できない。④読まなくてよい。⑤番外。際物だが価値はある。⑥カテゴリー③で読了できていないが再読する必要ありとして保留。

こんど棚卸してみよう。

| | コメント (0)

生きて死ぬ私 茂木健一郎

茂木健一郎さんが33歳のときに書いた「生きて死ぬ私」を読んだ。臨死体験や宗教について、非常に明晰で過不足ない分析をしている。このような「非科学的」な分野はジャーナリストが書く分野だ。それらが如何に分析という点では甘いかがはっきりする。自分が(つまりは多くの人が)10代後半から30代のころまでよく考えていたことについて、問題意識の定義と問題の整理をしてくれる本だ。そういう点でこれまで読んだ中では、最も優れていると思う。自分のもやもやを、すごく頭が明晰な友人が豊富な知識を背景にしてすらすらと分析して理解させてくれる感じ。ちくま文庫だが、文庫になってよかった。
彼の読者、ファンは皆そう思っているだろうけれど、あまりにも自分と問題意識や感じ方が近い。寡作でいいから、本書のように意義のある著作を書いて欲しい。研究テーマを貫いて、生きているうちに出来る限り遠くの地点まで到達してほしい。その到達を我々に知らしめてほしい、と願わせる人物だ。
以前からクオリアでデビューしたのは知っていたが、ソニー関係の研究機関にお勤めだし、ソニー製品のクオリアの関係かと思っていて関心を持たなかったのだ。著作を手に取ったのはプロフェッショナルの司会で見始めてからだと思う。テレビに出るというのは、そのようにして読者を広げる効用もあるんだなあ。テレビに彼が出ていなかったらずっと読まなかったかも知れない。
本職の哲学者ほど書き方が難しくなく読み手に予備知識や学術的訓練を求めてないエッセイだが、書いている当人は哲学の状況も踏まえている。科学者として、常識、先入観、他人の意見に囚われずに自分の頭で考えて書いている。高校生の課題図書に絶対にするべきだ。大人にとっても、勉強し直そう、考えることを再開しようと思わせる。
お陰で昔、少しはまっていた宗教の経験を再整理するよいきっかけになり、夜明けまでネットで関連情報を漁ってしまった。その宗教団体はネットの監視を執念でやっているらしく、ネット上には極めて限られた情報しか見つからなかった。それでも25年前は知らなかった新事実やその後の経緯が分かり、失われた人生のかけらをまた一つ取り戻すことができた。

| | コメント (0)

東京クラシック地図

川崎の書店で「東京クラシック地図」という本を発見。今でも営業している名曲喫茶、LPレコード店、ホールなどの他、クラシックの入門情報も載っている。名曲喫茶なるものが今でもこんなにあるとは知らなかった。これは全て行って見なければなるまい。名曲喫茶なんて大学時代以来20数年間行った事無い。52ページ、懐かしいのカフェアンサンブルが載っている。当時、試験勉強といえばここで粘っていた。雰囲気と合わない迷惑な客だったことだろう。僕が通っていた頃はちょうど開店した年だったようだ。マスターは指揮者をしていた人らしい。こんなことを20年以上たって始めて知るとは。近くに「カフェ・ル・バトー・イーブル」というランボーだかボードレールの詩から名前をとった喫茶店もあってここもよく通ったものだ。当時から趣味として向き合っていれば今頃ずいぶん詳しくなってもっと楽しめていたであろうに。
若者には、自分が何が好きなのかを気付かせること、気付くきっかけが大事だなあ。若い頃から趣味をたしなむこと当時の僕にはそれがなかった。
レコードコレクターという趣味があるんですね。あるのは認識していたがディープな世界のようだ。LPレコードが1枚200万円!段々と小さくなりながら濃縮されていく世界なんだろう。LPレコードの物理的耐用年数はあと何年くらいだろうか。世界最大のお店は日本にあるらしい。日本って凝るということにかけてはすごいな。

| | コメント (0)

死者の奢り 飼育 大江健三郎

子供の課題図書として購入。未読だったので読んでみた。作者の出発点となった二つの作品だが、意外とそれほど広くは読まれていないのではないか。古典とするには新しく、現代の作家としてポピュラーで分かりやすい小説を書くわけでもないので盲点のようになっている気がする。芥川賞の「飼育」とその直後に書かれた数作は、これは素晴らしい。時代背景としては小島信夫の「抱擁家族」のように進駐軍の存在感が大きく出ている。そうなると子どもにはよく分からない刺激的な内容になりがちなので、昭和40年生まれの理系の僕が遭遇しにくかった分野なのだろう。こういう小説を中学生の感受性の豊かな頃に読めば、衝撃は大きいだろう。文学に興味を持ついいきっかけになるに違いない。そういえば今年の春ごろ、成城学園の住宅地を散歩する大江健三郎とすれ違った。今度でた新作も読んでみよう。

| | コメント (0)

芸術の神様が降りてくる瞬間 茂木健一郎

茂木健一郎さんと、作家、舞踏家、音楽家、落語家など各分野のアーティストとの対談集である。タイトルが気になって平積みになっていたのを即購入。
この本は傑作。対談相手の方々の言語感覚が鋭く、大変示唆に富むことに驚いた。多芸多才な茂木さんの強みがよく発揮された対談だ。最後の荒川さんとのお話しも、最初は何を言ってるか分からなかったが、最後のほうには何となく伝わった気がする。それぞれの分野に読者が興味を持つきっかけにもなる。

| | コメント (0)

おひとりさまの老後

上野千鶴子の「おひとりさまの老後」。非常に売れているらしい。確かにとてもいい本だ。男性にとって、むしろ役立つのではないかと思われる。妻を見ていてつくづく思うが、女性は友人関係を作るのがうまい。単なる近所付き合いと友人関係とを絶妙に区別しながら、友人関係を培うために同じ時間と経験を共有する工夫をしている。これなら「おひとりさま」になっても幸せにやっていけそうだと感じる。
著者がある媒体に書いていたが、男も「金持ち」よりも「人持ち」になれと説く。家族もやがては離れていくのであるから家族や会社に人間関係を依存していると本当にひとりぼっちになってしまうと警告する。僕は自分の一年近い失業体験を通じてこの指摘は実感として痛感している。だから仕事をしなくなった自分と家族と離れた自分、つまり引退後と老後という二つのアフターライフにとても問題意識を持っている。
著者いわく、女性は自分が風邪を引いて起き上がれないとき、おかゆを作って持ってきてくれる友人を作れる。が、男性同士でそれはできない。男「おひとりさま」でも暮らしぶりの豊かな男性には女友達が多い傾向がある。もてる必要はない。人畜無害と思われてもいい。腰が低くこまやかに気のつく、まめでかさばらない男性になれ、と薦めている。
まあ、確かに趣味友達くらいはできるとしても、おかゆを持ってきてくれる友人というのは男性同士の場合不可能だ。そういうのは女性同士にはできて男性同士には絶対できないことの一つだ。人畜無害、腰低い、まめでかさばらない男性になって女友達を作れ、というのは鋭い。ただその中にもほんとにそうだという人と、二面性がある人との2種類があるだろう。
知人の50くらいの男性だが、彼は実際には愛人もいればもてる人物なのだが妻や周囲には決して気取られない周到さを備えている。表面的にはまさに人畜無害で腰が低くてまめでかさばらない男であり、若い女性からも「かわいい」と評される。世渡りがうまいのだ。いや2種類いるのではなく、むしろ男性でありながら「人畜無害、腰低い、まめでかさばらない」と女性に思わせることができるとしたら、それは相当なものだと言えるかもしれない。あるいは老人になって枯れてくればそれも可能になるのだろうか。

  

| | コメント (0)

自虐の詩

映画にもなったし、名作漫画として名高いことは前から知っていた。J-WAVEのグルーブラインで主題歌を歌う安藤裕子が出演していて、「普通の4コマ漫画が途中から登場人物が動き出してすごいことになる」とコメントしていたので改めて興味を持った。読んでみて納得。後半、それまで断片的な挿話だった幸枝とイサオの過去が大きな物語として動き出す。
僕は随分感情移入してしまったが、僕より遥かに人間のできている妻は淡々と読んでいた。この物語とは縁の無いような淡白な人生を過ごした僕のような人ほど感動するのかも知れない。文芸に興味のある人なら必読。

| | コメント (0)

たったひとりの戦い

アナイス・ヴォージュラード著。すばらしい絵。ストーリーも優れた寓話になっている。色彩感覚、人物描写が非常に高水準。

| | コメント (0)

ウェン王子とトラ チェン・ジャンホン

子どもが借りてきた図書館の絵本。
中国の絵本作家。実に見事な絵。水墨画の技法で描かれたという絵にものすごい力がある。これは必読だ。早速ネット書店にて注文。絵本の場合、ストーリーがどうのとか、そこから何が学べるかというよりまずは絵だ。

| | コメント (0)

植田正治の世界 平凡社コロナブックス

植田正治の写真集を探していて発見。いろいろな時期のいい作品が上質の印刷と手ごろなサイズ、価格で楽しめてお勧め。インタビュー記事も楽しい。119ページ「少女たち」など、とても1945年の作品とは思えない。時代と空間を超越した芸術家。よくいわれるように山陰にずっと居たのが良かったんだろう。19歳で写真館を開いて以来、自分のフィールドで自分の写真に専念できた幸せ。51ページ「童暦」からの一点はバルテュスのよう。完璧な構図の純粋芸術だ。彼の写真は永遠に古くならずに世界中の人々を瞠目させ続けるだろう。
「童暦」は当然ながら新品はなく、6万円くらいするようだ。こういうものは復刻できないのだろうか?

| | コメント (0)

名曲鑑賞辞典

中河原理著、「名曲鑑賞辞典」。特に有名な名曲をピックアップして、作曲の背景と鑑賞法を曲の進行にしたがって解説してある。これで少なくとも曲自体についてはとても理解が深まる。コンパクトないい本だ。最近はウィキペディア、特に英語のウィキペディアに詳細な情報が出ているが、バラつきがあるからこれをベースに勉強するのはつらい。

そのようにして良く知り、構造も把握している曲の場合でも、クラシック音楽の場合演奏なり録音なりを聴き始めて、だんだん感動しながら最後まで聴いて深く感動、という場合と、「ん?」と首をかしげ つつピンとこない場合とに分かれる訳です。

専門家や演奏家、詳しい人は実際の演奏のよしあしや気合の入り具合、よく鳴ってたとか鳴ってなかったとかが分かり、言葉 にでき、しかもその意見がおおむね一致するようだ。音楽評論家はすごい。

僕は素人なので、結果としてよかった、そうでもなかったは自覚する訳だ が、因果関係は解析できない。感動はそれでも押し寄せてくる。

| | コメント (0)

くわしっく名曲ガイド

茂木大輔著「くわしっく名曲ガイド」。題名や星座別おすすめ曲などの内容で敬遠していたのだが、とてもいい本だった。巻末のマタイ受難曲全曲解説はすばらしい。これだけでも1400円の価値は十分にある。オケの各パート解説も面白い。「個人的おすすめ名曲選」やあまり見かけないハイドン交響曲の解説もよい。

| | コメント (0)

日本人の精神と資本主義の倫理

波頭さんは一度聞いたら忘れない名前なので、名前だけ知っていた。仕事で波頭さんに影響を受けたとおっしゃる方にも会ったことがあり、タイトルの元になっているウェーバーの本は好きなので買ってみた。

茂木さんの言う、知的好奇心をひたすら追求していても徹底すれば食っていける、というお話しはすばらしい指摘だ。日本を愛しながらも日本的なネガティブな部分が許せず何とかしたいと思っているという問題意識もよい。でも考え方がちょっとステレオタイプで古典的かな。あんまり人の話を聞かずに自分の論法で走りがち。対談のようで対談になってない箇所がいくつか。学者にありがちな傾向か、と思う僕の偏見だろうか。比較すると現場で鍛えた波頭さんの大人らしさが引き立ってます。茂木さんは彼の専門分野の知見をもっと前面に援用するアプローチのほうがいいような気がします。ケンブリッジに行ってない奴は分からなくていい、というアプローチはさすがにどうも。そういうと平均に引きずりおろす大衆でそれが諸悪の根源だ、ということで論理完結。これだと宗教とおんなじなので対話になりません。

一方、波頭さんの言説は共感できる。見識と主張のある人だと思う。波頭さんの言う、金のために仕事をしない、金は最低限あれば幸不幸とは関係ない、というポリシーと生き方は非常に元気の出る、強力な信念だと思う。当たり前のようでいて、すっかり忘れていた。おかげで読了した翌日の昨日、今日と元気に過ごせました。ご縁があったらお会いしたい方です。波頭さんの言葉は明快なので、いわゆる「目が覚めた」感じになります。言葉の力は偉大です。

仕事の相手が半分以上外人という自分の日常で感じるのは、国がどうというより基本は人、という当たり前のこと。ただ、増幅回路の電源分圧による中間電位シフトのごとく、国によって同じ資質の人の結果特性が大きく上下しますが。

話はずれるが、こういう人とだけは仕事したくない、塩まいとけ、という人と5年に一度くらい過去合計二人ほど(意外と少ないな)遭遇した。彼らはたまたま日本人だ。自分が非常に苦手とする人種をしっかり定義し分析したいものだ。なぜ嫌いなのかをうまく言い表せない。嫌いな人、相性の悪い人という現象をしっかりと論理的、科学的にパターン化し、分析している研究や書籍はないものだろうか。それによって上手な対処の仕方を学べるのではないだろうか。

| | コメント (0)